2019年9月12日~13日(木・金)、拡大理事会研修で北海道を訪問しました。
一昨年の熊本、昨年の静岡に続き、今回の研修は北海道を訪問し、昨年の北海道胆振東部地震の際の生協の取り組みに学ぶことを目的としました。
●主な研修内容は以下の3点です。
①北海道胆振東部地震の被災地の現状の視察(むかわ町、厚真町、安平町)。
②地震発生時のコープさっぽろ、北海道生協連の事業対応および被災者支援活動の学習。
③北海道の協同組合間連携についての学習。
●小さな自治体に起きた大きな地震
お昼前に新千歳空港に到着。北海道生協連の平専務理事と、民間ボランティア団体(一社)Welbee Designの篠原理事長にお出迎えいただき、さっそく被災地視察(むかわ町、厚真町、安平町)に向かいました。
空港からのバス車中で篠原さんから地震発生当時の様子や被害の状況について説明を受けました。北海道胆振東部地震は、2018年9月6日午前3時7分にむかわ町と厚真町の町境で発生した最大震度7、マグニチュード6.7の大地震です。全道での死者数は44名、負傷者数は785名。また25,000棟にもおよぶ住宅被害、加えて全道でブラックアウトが起きるなどで総額1,620億円もの大被害となりましたが、中でも特にこの3町に被害が集中しました。
約1時間でむかわ町に到着。仮設住宅などを視察した後、町役場を訪問し、むかわ町職員の今井喜代さんとWelbee Designの西村勇太さんから被災者支援活動の状況をお聞きしました。地震から1年が経ちましたが、多くの被災者が「住宅課題」「精神的・身体的課題」「生活課題」「申請等の課題」を抱えているそうです。全町民の被災後の状況確認を喫緊の課題とし、今年3月にむかわ町が全4,000戸訪問を決定、Welbee Designが民間団体をとりまとめてボランティアを組織し、健康状態や困りごとの聞き取り活動を進められているそうです。
また、家が倒壊土砂に埋もれてしまった写真や文書を修復する「Omoidori Project」や、被災者と会話をしながら心のケアや生活相談を行う「北海道足湯隊」、地震で壊れたシカ柵を立て直す「厚真シカ柵再建プロジェクト」、全国有数の木炭産業再建を目指す「炭竃再生プロジェクト」などについても教えていただきました。行政と民間ボランティアが被災者の生活再建のために結集し多くの活動に取り組まれていることを知ることができました。
続いて視察した厚真町と安平町の被災地域では、地震から1年たった今でもまだ土砂崩れからの復旧工事が連日行われていました。「山が剥けた」と言われましたが、最大震度7を観測した厚真町鹿沼地域などではまだ工事が手つかずで道路の通行止めが続いていましたし、一見して無事に見える家屋も屋内が損傷してまともには生活できない状況が続いているのだそうです。
●復旧や住宅再建が進む中でも、多くの人が不安を抱えて暮らしています。
町のあちらこちらに建設型やトレーラーハウスの仮設住宅が見られました。3町合計で426世帯723名の方が仮設住宅に避難されたそうですが、仮設住宅に済んでいる人は該当世帯の35%と少なく、多くの被災者は全壊・半壊していても自宅に住み続けているそうです。また仮設住宅に住める期限は2年間(災害救助法)と定められており、その後のあてもなくすでに諦めている高齢の方も多いようです。地震に対応する保険への加入率も低い地域特性もあり、住宅に関わる課題は非常に大きく重いと感じました。
本州では報道されず私たちが知らない事実が今なお多く残されていることを知りました。
コープの基本姿勢「私たちは組合員さんのために存在する」
研修2日目は、こくみん共済 coop 北海道会館(札幌市菊水町)にて、地震発生直後からの生協(道連・会員生協)の取り組みを学習しました。コープさっぽろの組織本部の横澤本部長と宅配本部の栗栖運営部長から発生直後から店舗と宅配で進めた対応について、また北海道生協連の平専務理事からは道連や会員生協の対応について、堀江推進役からこくみん共済coopの取り組みなどを報告いただきました。
中でもコープさっぽろは物流センター停止などにより9.6億円の商品ロスなど大きな影響を受けたにもかかわらず、地震当日も職員の出勤率は100%を超え、当日から現場で判断して店舗では商品や支援物資の店頭販売を行い、宅配事業でも食品や弁当の配達が行われました。また被災地の4,000戸へのお見舞訪問や避難所での1か月間の食事提供活動、子どもさんへの絵本プレゼントなど、自分たちができることを自分で考えたくさんの支援活動が生まれたそうです。
コープさっぽろの方針である「地域にもっとお役立ちしていこう」の理念や、「私たちは地域の組合員さんのために存在する。できることは自分で考えて行動せよ」という基本姿勢が役職員に浸透しており、それが電気や水がない中でも自分で考え行動する力を生み出している力強さを感じました。
北海道の地に協同組合間の大きな連帯の輪を!
休憩をはさみ、今度は北海道生協連の川原事務局長から、北海道における協同組合間連携の進捗状況や活動について説明を受けました。
北海道生協連は、1956年設立、会員生協数21、組合員数188万人(購買生協のみ)、総事業高3,000億円(購買生協のみ)と、長い歴史があり広大な北海道で多くの組織がつながっている連合会です。
協同組合間提携の歴史は、1985年に提携推進協議会が設立され、2006年に目的と事業を見直し「北海道協同組合間連絡協議会」と改称し、現在まで協同組合に関する学習や広報に関わる連携活動を推進されてきました。
国際協同組合年(2012年)やTPP問題での結集の後、農協法改正により一旦はJAの関りが弱まりましたが、2014年に北海道労金と北海道生協連間で災害協定が締結され、それに基づき、コープさっぽろ50周年と連動して様々な事業推進がはかられ、生協・労金ともに大きな成果につながったそうです。
さらに、2016年秋の北海道の台風被害への全国からの支援募金を贈呈したこと等を通じて、北海道におけるJA・労金・生協連の連携活動が一気に前進しました。共同で学習会を開催したり運動教室を視察体験したり、「子ども食堂北海道」への支援、「ヒバクシャ国際署名」への参加など多くの取り組みを連帯して進められてきました。
そして今、これからのくらしの急速な変化に対応するためには、あらゆる場面で協同組合の連携が必要という認識に立ち、さらなる協同組合間連携を目指して、2020年に『協同組合ネット北海道』を発足することを確認し各組織で準備が進められているそうです。
教訓としては、
・あるべき論での推進に注意し、「ゆるやか」に推進すること。
・各組織にあるたくさんの成功事例を「あいのり」で生かすこと。
・撤退を恐れず「やってみる」ことを大事にすること。
を大事にされているそうです。
さらに、長期的な課題として、北海道のエネルギー問題や食糧問題、そして道内の休耕地を活用した農業生産への挑戦も構想されているなど、展望溢れるお話をお聞きすることができました。
■研修を終えて
今回の研修は貴重な学びの機会となりました。お世話になった北海道生協連の皆様、およびコープさっぽろの皆様に心から感謝いたします。
大地震から一年が経ちましたが、被災地ではまだ土砂の撤去や道路の修復、生活インフラの再整備などハード面の復旧が進められている途上であることを目の当たりにしましたし、多くの被災者の方の生活再建、心のケアがそれ以上に大きな課題として地域に存在していることがわかりました。また、そのために行政や民間(生協も含め)の多くの人が努力されていることもわかりました。
私たち岐阜県生協連は第3次中期計画の最重点課題に「防災」を掲げ、各会員生協の防災への備えを強化しBCPの実効性を高めることを目指しています。岐阜県においては、南海トラフ巨大地震をはじめとして、台風や豪雨災害などの脅威に晒されています。大事なのは防災意識を高めることと平常時からの備えと訓練です。今回の学びを活かし、ぜひ各生協や県連の防災活動に取り組んでいきたいと思います。
また、北海道における連帯の取り組みについて貴重な実践を学ぶことができました。下期から始まる岐阜県生協連の第4次中期計画(2020年度~)の検討に活かして生かしていきます。