活動の報告

西日本豪雨災害からあらためて防災・減災を考える。「2024年度拡大県連理事会研修in倉敷」を行いました。【24.11.21】

11/14(木) くらしき健康福祉プラザ ボランティア交流室にて

2024年11月14日~15日(木・金)、拡大理事会研修で岡山県倉敷市を訪問しました。
全岐阜県生協連では、役員の啓発活動として、毎年理事会で視察研修を行っています。「防災・減災」を重点課題としており、2017年は熊本県、2018年は静岡県、2019年は北海道、2022年は広島県、を2023年は兵庫県を訪問し、防災・災害支援をテーマに学習してきました。今回は、岐阜県社会福祉協議会を通じて倉敷市社会福祉協議会、岡山県生協連、おかやまコープに依頼して、平成30年7月豪雨災害時の対応や復興にかけての取り組みを学習させていただきました。

●主な学習プログラム

❖11/14(木)
①「倉敷市災害ボランティアセンターの取り組み」
 …倉敷市社会福祉協議会事務局次長 佐賀雅宏 様
②倉敷市真備支え合いセンターの取り組み
 …倉敷市社会福祉協議会地域福祉課主任 山下雅光 様
③生活支援コーディネーターによる被災地支援と、おかやまコープとの協働について
 …倉敷市社会福祉協議会地域福祉課主幹 松岡武司 様
④おかやまコープの取り組みと県生協連の役割
 …おかやまコープ執行役員 志賀秀樹 様
 …岡山県生協連常務理事 大同久人 様
❖11/15(金)
・倉敷市真備町周辺のバス視察。真備ふれあい公園・防災拠点施設、日の丸旅行真備営業所、川辺宿駅周辺、高梁川・小田川合流点 など
 …日の丸旅行真備営業所 井上大市さん

●泥だけを見ずに人を見よ

(右)佐賀次長

11/14(木)は、13時前に「くらしき健康福祉プラザ」に到着。根崎会長理事の挨拶で始まり、まず佐賀次長から倉敷市真備地区の概要に始まり、西日本豪雨災害による被災状況、災害ボランティアセンター(災害VS)開設に至る経過や実際の活動内容の説明とあわせて、災害VSの機能・一日の流れ、災害ボランティアの必要性、運営で意識していたこと、日頃からのつながりの大切さ、地元社協の役割等についてお話しいただきました。当時は多くのボランティアを送り出すことを注視し被災者に視点を当てていなかった反省を、倉敷市社協のその後の活動に生かされてきたということ、地域で共同することにより自元社協の力をより発揮できるようになる、というお話が印象に残りました。

●被災者が失ったものを一人ひとりに向き合って考えることの大切さ

(左)山下主任

続いては、山下主任から「倉敷市真備支え合いセンター」の説明を受けました。被災から3か月後にセンターが設置された背景、体制、具体的な活動や特徴を教えていただきました。特に「被災者は何を失ったのか… (もの、人、近隣社会、安心)」について、被災者の実際の声で確認・総括されており、表面上や一括して物事を見ないことの大切さを実感しました。一人ひとりの心に向き合っていくこと(災害ケースマネジメント)が災害ボランティア活動においては極めて重要であることを学びました。

●独りぼっちにさせない地域支援を進めることの大切さ

松岡主幹

最後に、松岡主幹から、倉敷市における「生活支援コーディネーター」の取り組みの説明を受けました。生活支援コーディネーターは、倉敷市社協での災害支援体制の中では、家屋の復旧に向けた支援(災害VC)、人に向けた支援(支え合いセンター)と並び「地域に向けた支援」の役割を果たす重要な組織です。発災から6年が経ち、公営災害住宅への入居まで生活再建は進んできましたが、大事なのは日常におけるコミュニティであり、「「生活」の場は整いつつあるが、「暮らし」は輝いているか?」に着目して、被災者が日常を取り戻すつながりづくりを支援されているそうです。社会福祉協議会の通常の活動と密接に重なっていると感じました。

●災害時に生協が果たす役割とは

(左)大同常務 (右)志賀執行役員

休憩をはさみ、おかやまコープの志賀執行役員より「西日本豪雨災害時でのおかやまコープの取り組み」を報告いただきました。おかやまコープの被害状況、初期対応、対策本部の動き(16回開催)、宅配と店舗の事業対応、災害協定に基づく行政対応(物資支援)、そして被災者支援活動について説明していただきました。未経験の大災害に直面し、対策本部では、優先順位として①自身(家族)の命、②役職員の命、③行政対応、④被災者のニーズをつかみ対応していくという方針を決め、職員の安否確認や理事長文書の発信、「支援ニュース」の発行など手探り状態の中で知恵と力を結集して目前の課題対応に当たられたことがよくわかりました。岡山県生協連の大同常務理事からは県連の立場から補足していただきました。災害発生時には物資の調達や人的支援は日本生協連主体の運営になることから、県連として大事なのは、NPOセンターや社会福祉協議会その他の諸団体、そしておかやまコープとの関係づくりや連携体制を構築・強化していくことが重要。県連に連絡すれば県内の生協が連携できる環境を整え、様々なニーズに対応するための「情報センター」の役割がこれから一層重要になる。そのためにも日頃からのつながりを大事にしたいと話されました。

●災害が起きても自分の身を守れるだけの備えを誰もがしておかなければならない

研修2日目は、日の丸旅行真備営業所にバスツアーを依頼し、甚大な被害に見舞われた真備地区の中の特徴的なポイントを視察しました。この地域は、2018年7月7日夜、小田川を含む河川の堤防8箇所が決壊して約1,200haで約4,600棟の浸水被害が発生したところです。61名の命が失われました。ツアーでは営業担当の井上さんの案内で、まびふれあい公園・防災拠点施設、日の丸旅行真備営業所、川辺宿駅周辺、高梁川・小田川合流点などを約2時間かけて回りました。

11/15(金)復興ツアーから   (左)小田川決壊箇所             (中)(右)まびふれあい公園にて

まびふれあい公園は、小田川の決壊箇所を補修・整備した公園で、防災備蓄品の倉庫、マンホールトイレ、かまどベンチなどを備えた防災拠点施設でもあります。真備地区の住民の方にとっては復興のシンボルであるとともに、一時的な避難場所としても心強い支えになっていると感じました。

日の丸旅行真備営業所にて。(中)末政川の有井橋の上で井上さんの説明を聞く。

次に日の丸真備営業所に伺いました。ここは氾濫した末政川の堤防間近にあり当時は屋根近くまで浸水しました。発災翌々日に水が引いてからも1か月近くは泥かき等で業務が停止していたそうです。みんなで屋上に上らせていただき周辺を見渡してみて、改めて浸水の規模や被害がいかに大きかったのかを実感しました。堤防の嵩上げ補修により有井橋の位置が高くなり坂の勾配が災害前と比べ格段に急になったとのことです。

小田川・高梁川合流地点にて。(左)(中)旧合流点       (右)新合流点

小田川と高梁川の合流点の付替え事業は、平成30年7月豪雨クラスでも安全を守らるよう、5年をかけて行われた「真備緊急治水対策プロジェクト」の一環で今春に完了したばかりです。旧合流点と新合流点を視察してみて、自然の力の大きさと治水対策の重要性を再認識しました。

旧合流点の記念碑の前で


岡山駅に向かう車中で、井上さんが、私たちへのアドバイスとして、「まずはハザードマップを確認して下さい。そして避難場所を2~3か所決め家族と確認してください。食料は最低3日分は準備してください」と呼びかけらました。基本中の基本ですが現実にはなかなかできていません。災害による被害と復興を体験されてきた方からの貴重なメッセージとして受け止めました。

今回の研修は、今年1月に岐阜県社会福祉協議会主催の研修会(岐阜市開催)で、倉敷市社協の山下主任の講演をお聴きしたことから、最初は社協さんのルートで、そして日の丸旅行さんの復興ツアーに、そして岡山県の生協にも参加いただけることになって実現しました。多くの方にご支援、ご協力いただきましたことに感謝いたします。ありがとうございました。

■今回の参加者 ※敬称略

全岐阜県生協連     会長理事  根崎 周一
全岐阜県生協連     副会長理事 内藤 浩
岐阜県学校生協     専務理事  片桐 学
岐阜労済生協      専務理事  平井 恵子
岐阜大学生協       専務理事  前口 直樹
コープぎふ       専務理事  児玉 幸夫
西濃医療生協      理事長   木村 隆之
西濃医療生協      専務理事  中村 英洋
生協アイチョイス岐阜  理事長   子安 貞継
生協アイチョイス岐阜  専務理事  浅野 正嗣
全岐阜県生協連     専務理事  佐藤 圭三
東海労働金庫営業統括部 副部長   中村 隆之

おまけ (左)(中)井原線川辺宿駅にて               (右)倉敷市美観地区